ぼぶの備忘録

日常を書くだけ。飽きるまで続ける。

酒と虚栄と錯覚、寂寥

会社の飲み会にて、部下から「おしゃれなバーとかは行かないんですか?」と訊かれた。

僕が普段1人で飲みに行くのは、ビール大瓶390円とか、焼酎290円とか、要は大衆的な立ち飲み屋が多い。
僕は「赤ちょうちんが掛かっているような、いわゆる一杯飲み屋というのかな、そういうのが多いね」なんて返す。

すると彼は続けて「そうなんですね! そういう店って、何が美味しいんですか? おすすめというか」なんて尋ねてくれた。

「うーん、どうだろう…特にないかな」
「えっ、おすすめがないのに、よく行くんですか?」

彼が純粋な目でそう訊くので、どう答えてよいのか分からなくなってしまった。

僕が1人でそういう店へ行くのは、食事を楽しみたいからではない。
もちろん美味しいお酒や料理をいただきたいときもあるが、少なくとも大瓶390円のお店へ行くときはそうではない。

では何が目当てかと言えば単純で、
「さみしいよ~~~」を紛らわせることができれば、それで良いのである。

それに、おしゃれなバーへ行くと、“その他大勢”になってしまうじゃないか。
疲れた顔のおじいさま方がメイン客層であるような立ち飲み屋へ行くと、特に何もしていなくても“若さ”だけで階段の一段上にいられるような気がするじゃないか。

もちろん実際にはそんなことはないと分かっているのだけど、酒を飲んでいるときくらいはおこがましくいさせてほしいのだ。

そんなふうに思いながらも、部下くんには「それくらいのほうが普段使いしやすくていいんだよ、肩肘張らなくてさ」と答えておいた。
醜悪な上司になりたくはなかった。

その後彼は、酒を飲んで気持ちよくなったレッドキングみたいな顔のお偉方につかまり、「俺の若い頃は」トークのターゲットになっていた。僕だってお偉方だって、誰だって、気持ちよくなりたいのだ。
今は方向性が違うだけでいつか僕もあの怪獣になるのだろうなと思いながら、その嫌な思いをかき消すためにただひたすらビールを飲んだ。